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ハラスメントについて

ハラスメントについて

ハラスメント対策の重要性

昨今、職場におけるハラスメント対策の重要性が認識されていますが、どのような対策をしたらいいのか分からないという企業は多いのではないでしょうか。

ハラスメント対策を怠ったり、対応を間違えると

といった重篤な問題が発生してしまいます。

また、昨今ではハラスメントという言葉が一人歩きしてしまっており、あらゆることが「〇〇ハラスメント」と言われてしまい、特に管理職が部下との関係で萎縮してしまうという事象が起きています。
こういった事象もハラスメント対策をきちんとすることで防止することができます。

セクハラ対策してますか?

Q

以下のうち、セクハラに当たるものはどれでしょうか?

① 体調が悪そうな女性社員がいたので、「今日具合悪いの?大丈夫?生理?」と心配して声をかけた。
② 新入社員に檄を飛ばそうとして、「どうした、男だろ、こんなことでめげてないで、根性出そうぜ。」と励ました。
③ 酒席で、女性社員に大皿料理のとりわけをするように指示した。
④ 名前を憶えていなかったので、「そこの女の子、それ取ってもらえる?」と話しかけた。

A

実は全てセクハラに当たる可能性があるのです。一つでもセクハラではないと回答された方は、セクハラ対策が不十分かもしれません。

セクハラ対策はなぜ重要なのか

セクハラ対策はなぜ重要なのか

大手飲食チェーン店で働く女性が、同じ店の副店長から後ろから抱きしめられる等のセクハラを繰り返し受け、性的関係も強要された末、自殺を図った事件で、2015年、女性の両親が、大手飲食チェーン店を相手取って訴訟を起こした事件がありました。この訴訟では、女性が自殺するに至ったのは、同社がセクハラを防止する体制の構築を怠ったことが原因として、同社取締役全員に約9,800万円の賠償請求がされています。 この訴訟は、提訴当時、各メディアがセンセーショナルに取り上げたため、訴訟を起こされた会社の信用が失墜してしまったのは、指摘するまでもありません。 企業にとって、こういった訴訟は、敗訴するかどうかではなく、提訴されるだけで企業自体の存続をも脅かすほどに社会的な信用を失ってしまう、という恐ろしさがあるのです。 現在、男女雇用機会均等法上、セクハラ対策は、事業主としての義務になっています。 そして、セクハラ対策を怠ってしまうと、行政処分の対象となってしまったり、民事で損害賠償責任を問われてしまう等、企業にとって大きなダメージになるのです。

セクハラ対策をしましょう

【ケース1】女性社員から、上司からセクハラを受けて困っているという相談を受けた。

【ケース2】ある部署で開かれた忘年会の席で、男性社員が女性社員に対し、これまでの性的体験を執拗に聞くという行動を取ったことが判明した。

このような問題が社内で起きたとき、貴社では、どのように対応しますか?

ありがちな対応例

【ケース1】
女性社員から話を聞き、迅速な対応が求められていると考え、上司に対し、速やかに懲戒処分を行った。

【ケース2】
就業時間中の話ではないこと、また、会社全体の行事でもなく、部署ごとの内輪の忘年会なので、会社が対応する必要はないと考え、特に対応しなかった。

こういった対応だと、場合によっては、会社に責任問題が生じることがあります。
それでは、それぞれの対応の何がまずかったのでしょうか。
求められるべき対応例はどういったものだったのでしょうか。

ガーディアンが提案する対応例【ケース1】

(1)ヒアリングを行う

そもそも、セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、
① 職場において行われる行為で、
② 労働者の意に反する性的言動であり、
③ それに対する対応によって、当該労働者が労働条件について不利益を受けること(対価型ハラスメント※1)
もしくは、職場環境が健全でないものとなり、就業に支障が生じていること(環境型ハラスメント※2)
と考えられています。
そこで、女性社員から「上司からセクハラを受けて困っている」と申告されているので、本当にセクハラがあったのか、女性社員、上司の男性社員それぞれから慎重にヒアリングをおこなってください。

セクハラ問題が起きた場合、職場では通常、性的言動をする必要はないはずですから、基本的に受け手がセクハラだと感じれば、行為者の言動はセクハラにあたる、と考えていただいて構いません。ただし、たとえば、同じ言動をしたはずが、Aさんだったら許されたのに、Bさんがやった途端に「セクハラだ」と言われたような場合は、単にBさんのことが個人的に嫌いだとか生理的に受け付けないとかということでしかなく、そのBさんの言動自体をセクハラだと判断する必要はありません。つまり、セクハラだと感じた、受け手側の言い分が合理性や妥当性を欠くものであれば、それはセクハラにあたらないだろう、ということです。 

ヒアリング時、特にセクハラを受けているという女性社員からは、いつ、誰が具体的にどのような言動をしたのか、具体的に話を聞く必要があります。その際、セクハラを受けて困っていると相談してきた女性社員がヒアリングで更に不快な思いをしないよう、ヒアリングを実施する場所や実施者の選定等には十分に配慮すべきです。

また、セクハラを行ったとされている男性社員からも同様に、ヒアリングを行います。まだセクハラがあったかどうかははっきりしませんから、決めつけるようなヒアリングを行うのはもってのほかですが、社内で「あの人セクハラしたらしいよ」などと噂が立ってしまわないように、やはりヒアリングを実施する場所や実施者の選定等には十分に配慮すべきです。

ヒアリングをしたあとは、それぞれの言い分について、きちんと書面にまとめておきましょう。セクハラがあったと判断して、男性社員に不利益処分を科す場合、あとで、男性社員から、あれは合意の上での行為だった等として、当該不利益処分の無効等を求めて訴訟等を起こされたときでも、きちんと書面をまとめておけば、スムーズに対応できます。書面にまとめる際は、ヒアリングをした会社の側だけで作成するのではなく、女性社員・男性社員それぞれから、内容を確認してもらったうえで間違いないとして署名等をもらっておくことも有効な手段です。

このように、ヒアリングは配慮すべき事項も多いですから、弁護士等の専門家をヒアリングの場に同席させる、あるいはヒアリング自体を任せる等の方法で弁護士を活用することは非常に有益でしょう。

(2)適正な対処をする

ヒアリングの結果、真実セクハラ行為が行われていたとした場合、会社としては、就業規則に従って懲戒処分をすることができます。

懲戒処分を行う場合、セクハラ行為に対する処分が重くなりすぎないように注意する一方で、あまりに軽い処分では、セクハラ被害を受けた女性や周囲で見ていた従業員たちから、「この会社は、セクハラしてもたったあれだけの罰で済んでしまうのか。セクハラなんて大したことないと考えているんだろうね。」というような声があがってしまうなど、他の従業員たちの就労意欲を低下させてしまいかねませんから、慎重に対応すべきです。

また、懲戒処分を行って後は終わり、というわけではなく、セクハラ被害を受けた女性の労働環境を整えるために、男性社員か女性社員の配置転換等も検討しなければなりません。もっとも、配置転換についても、権利濫用と判断されるようなことのないように、慎重に決める必要があり、また、職種限定や勤務地限定の雇用契約を結んでいる従業員を配置転換させる場合には、その従業員の同意が必要となる点で、注意が必要です。

ガーディアンが提案する対応例【ケース2】

セクハラとは、先に説明しましたとおり、「職場において行われる行為」とされていますが、ここでいう「職場」の意味を考えるときは注意が必要です。

厚生労働省によると、「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれるとされています(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき指針」平成18年10月11日厚生労働省告示第615号)。

そのため、【ケース2】については、ただ勤務時間外だからと簡単に考えるのではなく、「ある部署で開かれた忘年会の席」が「職場」にあたるかどうかの検討をきちんとする必要があります。

通常、勤務時間外に行われた宴会等についても、職務との関連性や参加者、参加が強制的か任意かなどを考慮して、実質上職務の延長と考えられるものについては「職場」にあたると考えられています。

よって、【ケース2】では、部署ごとに開催された忘年会だとしても、強制参加だったかどうかという点や忘年会で仕事に関する話があったかどうかという点なども踏まえて、実質上職務の延長と考えられるものであれば、すぐに会社としての対応をしましょう。

一歩先行く防止策

一歩先行く防止策

セクハラ問題に対して企業に求められる対応は、大きく分けて、①起きてしまったセクハラ事案に対する対応と、②職場内でセクハラ問題が発生することを防止するための対応です。

行政処分や民事上の損害賠償責任を問われたりすることのないように、①起きてしまったセクハラ事案に対する対応をきちんとしておくべきであるということは、言うまでもありませんが、企業が特に力を入れて対応しておくべきなのは、②セクハラ防止策です。

いまどき、あからさまなセクハラが問題になるケースはそう多くありません。むしろ、セクハラになるかどうかパッと判断することが難しい微妙なものが問題になるのです。

何でもセクハラだとバッシングしかねない現代社会の風潮が、「この言動はセクハラになってしまうのではないか」と管理職を委縮させ、また、「この上司の発言はセクハラにならないのか?」と従業員の心にもやっとした思いを生み、職場全体がギクシャクしたものになっていく。そうして、生産性が落ち、徐々に企業全体を蝕んでいきます。

このように何でもセクハラにあたるという誤った認識が企業をだめにします。セクハラ問題が発生しないよう防止策を準備することは、何でもセクハラだという風潮を防止し、企業の健全な成長を促してくれます。

セクハラ対策として、厚生労働省が企業に求めるものは、
・就業規則や社内報などで、セクハラを発生させないという企業の考え方を明確にし、従業員に周知・啓発する。
・相談・苦情窓口を設ける
・発生したセクハラ問題について迅速かつ正確に対応する。
・セクハラ問題が発生したときの相談者や行為者などのプライバシーが保護されるように必要な措置を講じておく。
・相談したことや事実関係確認に協力したことなどを理由に不利益な取り扱いをすることはない旨周知し、相談等をしやすい環境を整える。
というものです。
これらの対策は、ただ形式だけ整えても実効性がないと意味がありません。

たとえば、ただ社内報でセクハラ禁止と周知しても、何がセクハラにあたるのかという正しい知識が従業員にないと、いたずらに従業員の行動を制限するだけです。きちんと従業員に研修を行い、セクハラについての正しい知識を身につけさせましょう。

また、相談・苦情窓口を弁護士事務所等の第三者にしておくことも非常に有効です。なぜなら、セクハラ被害に遭われた方は、会社に相談してしまって、周囲にばれないだろうか、相談したことで不利益な取り扱いを受けないだろうか、と不安な思いを多く抱え悩まれていますから、相談窓口を会社と切り離してしまうことで、そういった不安な思いを取り除くことができ、相談窓口がより有効に機能するからです。相談窓口が相談者にとってより使いやすいものとして機能すれば、企業内の問題を早期に発見できますから、おのずと早期対応が実現でき、ひいては企業にとっても有効に機能することになります。

企業ごとにセクハラ対策のポイントは異なってきますから、企業の実情をよく知る顧問弁護士に、具体的な対策を相談してみることをお勧めします。

パワハラ

最近このような質問・相談を受ける機会が増えています。

【ケース1】恒常的な人手不足で常に業務量が多く、ほぼ毎日部下に残業をしてもらっているが、その状況に部下は納得がいっていない。というのも、いくら残業をしても業務量が減ることはなく、終わりが見えないためだろう。部下が不満ばかり抱いているので、本当は残業してもらいたいが、パワハラだと非難されそうで、頼みづらくなってしまい、部下に振るべき仕事も自分でやってしまっている。

【ケース2】会社にこれまでの頑張りが評価されて、とある部署の管理職に昇進しました。会社からの期待に応えたいと、どうやって売り上げを伸ばすか等色々と案を考えて、さっそく部下たちに新しい業務について指示を出したのですが、そうしたところ、「いきなり来て、これまでと違う仕事の仕方を指示されても、そんなのできるわけないじゃないですか。売り上げだって簡単に言うけど、そんな簡単な話ならとっくに売り上げ伸ばせてますよ。無理難題を押し付けて、あなたのやり方は私たちに対するパワハラです!」などと文句ばかり言って、全然業務指示に従ってくれません。これらは、パワハラなのでしょうか?

それぞれのケースについて、考えてみましょう。

【ケース1】は、パワハラではない!

パワハラとは、

同じ職場で働く者に対し、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・肉体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為
をいうとされています(平成24年に厚生労働省が発表したもの)。

パワハラとは、

この定義からも明らかなとおり、「業務の適正な範囲を超えて」行われた行為がパワハラにあたり得るのであって、業務の適正な範囲内のことであれば、それはパワハラにはあたらないのです。 ここが、セクハラと異なる点です。セクハラでは、基本的に、受け手側がセクハラだと感じればセクハラになると考えていただいて構わないとしましたが、パワハラはそうではありません。パワハラは、いくら受け手側が「こんなのひどい!パワハラだっ!」と思っていたとしても、その行為が業務に必要なものであれば、それはパワハラだとして糾弾される行為にはならないのです。

【ケース1】

恒常的な人手不足を解消するという根本的な課題はありますが、現場レベルでは、人手不足だから業務が停滞しても仕方がないというわけにもいかず、もちろん、労働法上の規制の範囲内ではありますが、部下に残業を命じるのも「業務の適正な範囲」内のことです。ですから、部下から「パワハラだ」と非難されそうだとしても、それは正しい非難ではありませんから、委縮する必要はないのです。

【ケース2】

部下から上司に対するパワハラになり得る!
仮に部下たちが言っているとおり、指示内容が無理難題であって、到底従うことができないものだったとすると、場合によっては、遂行不可能な仕事を強制した等としてパワハラに該当してしまう可能性もあります。
ですが、そのような事情が特にないのであれば、部下たちの指示に従わないという行動こそ、上司に対するパワハラにあたり得ます。パワハラは、職務上の地位が上の者だけができるものではなく、同僚や部下からのパワハラも成り立つものです。
上司から指示が出たにもかかわらず、文句ばかり言って指示に従わないというのは、服務規律違反ということができますから、部下からのパワハラだという発言に臆することなく、きちんと指導や処分をするべきです。

パワハラの典型例としては、
①身体的な攻撃:暴行・傷害
②精神的な攻撃:脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
③人間関係からの切り離し:隔離・仲間外し・無視
④過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
⑤過小な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
⑥個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること
以上の6類型があるとされています。

しかし、現実に起こるパワハラ問題の多くは、この6類型のどれに該当するかがすぐ分かるような簡単なものではなく、そもそもパワハラなのかどうかさえ微妙で判断がつきにくいものです。だからといって、なんでも全てパワハラにあたるというような解釈をしていくと、先に紹介した【ケース1】や【ケース2】のように、管理職が委縮してしまい、企業としての成長を阻害してしまうことにもなりかねません。

そのため、社内でパワハラ問題が発生したときは、うやむやにすることなく、慎重に判断・対応していかなければなりません。ある行為がパワハラにあたるかどうかは、当該企業の業種や企業文化、当該行為が行われたときの具体的状況等の諸事情を踏まえて、業務の適正な範囲内のものにあたるかどうか、という視点で個別具体的に検討していく必要がありますから、パワハラ問題が発生した場合は、弁護士等専門家にご相談されるべきでしょう。